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韓ドラ「ベートーベン・ウィルス」のカン・マエ×ルミの二次小説ブログです。管理人:寅三吉。

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寅三吉。

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熱り ~彼女の囀り2~

Posted by 寅三吉。 on   2  0

その日、仕事から帰ってきた伴侶の様子がいつもと違うと彼女は思った。

彼女の夫は非常に弁が立つ男であるのだが、プライベートでは然程饒舌ではない。
仕事が忙しい時期は必要なこと以外、自ずから喋らないこともあるくらいだ。
だから彼女が彼の分まで喋ろうと必要以上に多弁になってしまう。

そんな彼が今日は夕食の間、喋り続けている。
いつもは彼女の方から訊かなければ話さないようなこと…その日の仕事や団員のこと、今練習してる音楽のことなど…を話している。

「本当に…アレッサンドロは何故あんな楽天家なんだ?
 私がどれだけ叱ってもどこ吹く風だ」

しかも朗らかな表情で。

「しかしヴィクトールは流石だな。
 付き合いが長いからアレッサンドロは勿論のこと、他の団員たちの扱い方も心得てる。
 流石一流のコンマスだ」

トゥ・ルミは夕飯であるチキンのレモンハーブ焼きをフォークに刺したまま口に運ぶことも忘れ、先ほどから喋り続ける夫…カン・ゴヌの顔をまじまじと見つめていた。



熱(ほて)り ~彼女の囀り2~



「…先生?」

「ん?」

「今日、仕事で何か嬉しいことでもあったんですか?」

「いや、別に特に何もないが…。
 何故だ?」

「うん…なんか今日の先生、すっごく機嫌がいいなーって思って」

「そうか?」

「うん、さっきからずっと喋り続けてる」

するとカン・マエは腑に落ちないような顔になり、食事に集中しはじめた。





夕食の後片付け後、ルミは二階の自分の部屋のパソコンに向かい仕事を始めた。
依頼されていた編曲の仕事の納期が明々後日に迫っていたのだが、明日と明後日はカン・マエが休みで買い物に連れて行ってもらう約束をしている為、今夜中にでも仕上げてメールで送ろうと思っているのだ。
現在編集中の原曲を聴きながら、モニタに映るオタマジャクシを「うーん…」と唸りながら睨んでいる。

「…こう、ここはもう少しポップな感じにした方がいいかな?」

独り言ちながらマウスをカチカチと鳴らしていると、部屋のドアが開いてカン・マエが後ろ手に入ってきた。
パソコンデスクに近付いてきて無言のまま自分を見ているカン・マエを、ルミは大きな目を更に大きくして見上げている。

「どうしたの?
 なにか入用ですか?」

「いや、特に用はない」

「え?」

「いいから仕事を続けろ」

「あ…はい」

カン・マエは部屋の隅に置いてある木製のラックに軽く腰掛けると、手にしていた本を開いた。

ソクランに居た頃よりも自分の趣味の物を置くことはなるべく控えているものの、彼女のこの部屋のインテリア――縫いぐるみやキャラクターの置き物、フェミニンな柄のカーテン――をカン・マエは微塵も理解できず、部屋に来るたび顔を顰めている。
そんな彼だから、何も用がないのにこの部屋に来るのは非常に稀なことなのである。
明らかにいつもの夫とは違うと思い首を傾げつつも、仕事を早く終わらせるためにルミは再びモニタに目を向けた。

それから数分した頃…カン・マエは本を読むふりをしながら斜め後ろから妻の姿をずっと眺めているのだが、珍しく集中してる彼女は気付く気配がない。
すると痺れを切らしたのかカン・マエはおもむろに立ち上がり、ルミの後ろから静かに近付くと…

険しい顔でモニタ画面を睨み付けていたルミは目の両端に手が出てくるのが見えたので「へっ?!」と声を出して驚いた。
その手はルミの細い肩をふわりと包み込むように抱きしめてきた。
こんな風にカン・マエが突然何の前触れもなく抱きしめてくるようなことは、共に暮らし始めて1年半以上経った今まで殆どなかったことなのでルミは些か驚いている。
そして驚いてもいるが嬉しくもある…のだが、今は仕事を早く終わらせたいルミである。

「あの…先生、仕事が…」

「仕事なんて後でいいだろう。
 トゥ・ルミ…こっちを向け」

左耳に、結婚した今でもドキリとする低い声でそう囁かれルミは逡巡したが、手にしていたマウスを一度クリックして立ち上がるとゆっくりと振り向く。
目と目が合うとカン・マエはルミの柔らかな髪を数回撫でてから引き寄せて強く抱きしめたので、ルミの左頬は夫が着ているアーガイル柄の黒地のセーターに押し付けられた。

(先生、今日は本当にどうしたんだろう?)

外は雪が積もっている所為かパソコンの音を消した今、部屋の中は静寂に包まれている。
すると彼の胸の律動がルミの耳に聞こえてきた。

(…ま、いっか。
 こんな先生、滅多にお目にかかれないもの)

夫の温もりを存分に堪能しようとルミは目を瞑り―――

だがすぐに目を開けた。
そして何度か瞬きをした。

「……先生」

「……」

「先生、熱があるみたいです」

カン・マエは眉を顰め、抱き締める力を緩めてルミの顔を見下ろした。

「熱?
 どうした、お前、風邪を引いたか?」

「違います!
 私じゃなくて先生に熱があるの!」

「――俺に?」

寝耳に水だとでも言いたげに少々目を見開き驚いた顔になる。

「自覚ないの?
 すっごく高いみたいよ!
 セーター越しから熱の高さが伝わってくるもの」



なかば無理矢理寝室に連れてこられ、ベッドに寝かされたカン・マエの唇には温度計が咥えられている。
測定終了を知らせる電子音が鳴ったのでルミが取ると、そこに表示されていた数字に彼女の顔はしかめっ面になった。
その表情を見たカン・マエは熱があるという自覚はなかったのだが、やはり体は正直なようで気怠そうに起き上がると温度計を覗き込んだ。

「39度3分もあるじゃない…」

珍しく、ルミは夫の前で大きな溜息を吐いた。

「体、だるくなかったの?」

「特にこれと云って。
 …ああ、だが夕方ごろから異様な悪寒があったな。
 でも今はなんともない。
 寧ろ暑いくらいだ」

「それですよ。
 熱が上がってる時はゾクゾクと寒気がして、で、上がりきると今度は身体が熱くなるのよ」

「39度か…。
 解熱剤を持ってきてくれ」

「熱を出した方が治りが早いから、薬は飲まない方がいいの。
 今日はもう大人しく寝てください」

「………」

「明日と明後日がお休みで良かったわ。
 お休みの間に治しちゃいましょ、ね?」

「…明日は買い物に行きたかったんだろう?」

「買い物なんていつでも出来るから。
 食材だけは近所で買ってくるからいいわ」

ルミはカン・マエの身体をベッドに押し付け、シーツを掛けた。

「…そういえば、入籍のご挨拶に先生のお姉さんのところに伺った時、お姉さん云ってたっけ。
 『ゴヌは高い熱が出るとすっごくお喋りになるから、それが発熱のサインだと思ってね』って」

「――姉はそんなことを云っていたのか?」

「うん。
 本当にお喋りになるのね、ビックリした。
 先生、前にお姉さんとは関係が希薄だし嫌われてるって云ってたけど、お姉さんは先生のことちゃんと見てるのね。
 そんな邪険にしちゃ駄目よ」

そう云われたカン・マエは不貞腐れたような表情をした。

「へへへ、でもお姉さんも知らない、新しい発見があったわ」

「……姉も知らない?
 なんだ?」

「あのね、先生は熱を出すと―――」

「……」

「……」

「『熱を出すと』…続きはなんだ?
 早く云え」

「やっぱり……云うの、やめます」

「ん?」

「やめます、云うの」

「…何なのか気になるだろうが、云え」

「んー…だって勘違いかも知れないし」

「また早とちりか。
 全くお前と云う人間は本当に成長が見られないな。
 いつになったら落ち着いた大人の女になるんだ、うん?」

「…熱がある時くらい、お小言はお休みにしてください」

「それどころかお前の所為で熱がまた上がりそうだ。
 またゾクゾクしてきた」

と両方の二の腕を手のひらで擦って寒さを表すリアクションをした。

「もうっ…厭味も今はお休み!
 氷枕作ってきますから、大人しく寝ててくださいね」

そう云ってルミは立ち上がったが、左手首を掴まれたので再びシーツにトスンと臀部を落とした。

「何?」

「…氷枕はあとでいいから、俺が寝付くまでここに居ろ」

「でもそんなに熱が高いと頭痛くて眠れないんじゃない?」

「大丈夫だ」

「…シーツに入って添い寝した方がいい?」

「ああ。
 ――いや、やっぱりこのままでいい…」

「でもまた寒気がしてきたんでしょ?」

「…お前に風邪がうつったら、俺が看病しなきゃならなくなるだろう。
 お前が風邪なんぞひいたらキムチチゲを作れだの、ニンニクを入れた生姜茶を作れだの、部屋が臭くなりそうなものを作らされそうだ。
 それだけは阻止したい」

「先生のキムチやニンニク嫌いはもう重々承知してますからそんなこと云わないわよ。
 添い寝しますよ?」

「いいからそのままでいろ。
 退屈なら鼻歌でも歌っていればいい」

「はい?」

「――歌でも歌ってろ、と云ったんだ」

「はぁ…」

そのように突然云われてもこんな場面で歌を歌う気になるものではないので、ルミは頭を掻くと押し黙ってしまった。

「…静かすぎて気持ちが悪い、歌え」

「音楽、かけましょうか?」

と、サラウンドシステムが仕舞ってある扉を指差した。

「いいから歌え。
 タイトルは知らんが最近よく歌う英語の歌があるだろう。
 あれでいい」

「………」

数秒の間逡巡したが、ルミは静かに歌いだした。
カン・マエは歌を聴きながらゆっくりと瞳を閉じる。


先ほどルミは「先生は熱を出すと甘えん坊になる」と云おうと思った。
だが、これを云ってしまうと今後発熱したときに甘えてもらえなくなってしまうかも…と考え、云うのを止めたのだった。


カン・マエは彼がこの世で唯一愛する女性の歌声に包まれながら、うつらうつらとまどろみ始めていた。
身体は寒気を感じていたが、心は安らぎと温かな熱(ほて)りを感じている。


自分の歌が夫にとって最高の睡眠剤だということを知らないルミだが、カン・マエが熟睡するまで小鳥が囀るように小さく、そして優しく歌い続けた。



Das Ende







スクロールするとあとがき





























こっそりとアップ致しました~( ´Д`)=3 フゥ…
お待たせして申し訳ありません。
(実際は2014.12.10にアップしたSSでした)


相変わらず自分の体のことに鈍感なマエストロです。

熱が出るとお喋りになったり、甘えん坊になったりするカン・マエ…クックックッ…。

これからも熱が出たら甘えん坊になってください♪
勿論ルミ限定ですが。
多分ルミ以外には「寄るな、触るな!」オーラを出してると思う…。


ルミの歌声で寝るカン・マエ…ということで「彼女の囀り2」を副題にしました。
生涯云いはしませんが、愛妻の歌声が実は大好きなカン・マエです。


因みに「熱が出るとお喋りになる」…は、子供の頃の私がそうだったようです。
私以外にもそういう人、居ますかね…?

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寅三吉。

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-2 Comments

ran says..."有難うございました"
寅三吉。さま   こんにちは☆

拝読したまま、仕事に忙殺され、途中まで書いたメモも消え、、、
今に至っております。
こちらに記すのが遅くなりまして、ごめんなさい

さて、今回は拍手コメの方がいいかなーーーと思ったのですが
いろんな事情にひっかかり、コメ欄に失礼します。

ところで、熱が出るとお喋りになるお子様だったのね、寅三吉。さま☆
かわいいーーー
私の場合は、自分がどんな子供だったか定かじゃないけれど(笑)
私は平熱が高いのか(ただ鈍いだけという話も)、今でも38度超えて
「何か熱があるかも、、、」と気が付く人です。

もうねーーー
後ろから包み込むように抱きしめるカンマエ、、、死ぬほど好き☆
かつて「あすなろ白書」でキムタクがやった「あすなろ抱き」以来
こよなく愛しています、、後ろから抱きしめられるの☆
それも、アーガイル柄の黒地のセーターを着たカンマエですかーーー
うわーーーーそのセーターのカンマエに抱きしめられて、
窒息させられてもイイわ、私。

そこから部屋の中の静寂と胸の鼓動って、、、こういう世界好きーーー
でも、それ以上に熱を出して甘えん坊になるカンマエにニヤニヤ!(^^)!
甘えているのに、カンマエらしくて、、、

うわーーーこんなカンマエいいじゃない、と思いつつも
毎日、甘えん坊カンマエでは彼じゃなくなりますものね。
何年かに一度、こんな高熱で甘えん坊になるからいいんですよね。

でもね、、、ふと自分に置き換えてみた。
主人が高熱出して「歌を歌えーー」って言ったら
「この人、高熱で頭おかしくなったんじゃない」って絶対に歌わないな、私。
こんな事を思う鬼嫁です。

新作を読ませて頂き、有難うございます。
なんかね、、、いい意味で落ち着いた作品に感じて、、
不必要な言葉をそぎ落として、洗練された言葉たちで作られる世界は
私にとっては、いつも以上に落ち着いて感じられ、いい世界だったなと思わせてくれます。

また、新たな世界が完成した時は拝読させてくださいね。
有難うございました

2014.12.15 10:22 | URL | #0EjQUAK2 [edit]
寅三吉。 says..."Re: 有難うございました"
●ran様

お忙しい中、コメントをくださり本当に有難うございます!
遅くなり~…だなんて、コメントを下さるだけでも嬉しいので気になさらないでくださいっ!
そして色々と気を遣ってくださり恐縮です。

> ところで、熱が出るとお喋りになるお子様だったのね、寅三吉。さま☆

そうだったらしいです。
自分は高校の時に友人に云われて知りました。
(いつも以上に喋るしハイテンションで、様子が変だ…と思ったらしい)
そして先日、母親にも「あんたは子供の頃、熱が出るとやたらとお喋りになったのよ~」と云われました(笑)

ran様は平熱が高いのですか。
でも低いよりも高い方がいいですよ~高い方が風邪を引きにくいらしいですし。
平熱が1度ほど低い男友達が居りますが、彼は37度過ぎると普通の人の38度になるから辛い…と云っております。

…そういえば我が家のカン・マエも鈍いですね。
もしかするとカン・マエも平熱が高いのかもしれない(笑)

> もうねーーー
> 後ろから包み込むように抱きしめるカンマエ、、、死ぬほど好き☆
> かつて「あすなろ白書」でキムタクがやった「あすなろ抱き」以来
> こよなく愛しています、、後ろから抱きしめられるの☆

後ろから抱きしめることを「あすなろ抱き」って云うんですか!
あのシーンは有名なので知ってましたが、その言葉は存じませんでした。
因みに我が家のルミはベッドの中でカン・マエに後ろから抱きしめられるのが大好きvという設定になっております(・∀・)

ran様はご存知のように私はアーガイル柄が大好きなので、ついついカン・マエに着せてしまいました。
あの素敵胸板を包み込んでるアーガイル柄セーターです(笑)
そりゃー興奮して息も出来ずに窒息することでしょう(笑)

> 甘えているのに、カンマエらしくて、、、

甘え方も決してゴロニャン的なものじゃなく、飽くまで「俺様」な甘え方をするんですよね(笑)
偉そうに上から目線、上から口調の甘えん坊カン・マエだったりします。


> 「この人、高熱で頭おかしくなったんじゃない」って絶対に歌わないな、私。
> こんな事を思う鬼嫁です。

私もぜーーーったいに歌いません!
歌ったとしても「お願いだからもう静かにしてくれ」っていう歌うたいます。
布袋さんの「スリル」とか(笑)
私、ran様よりも鬼嫁ですよ~♪

拙作をいい世界に感じ取ってくださり幸いです。
自分の思い描いた世界を文章にすることは難しいですが、日々精進…もう少し書いていけたらと思います。
別バージョン再会編も大いに残ってますしね(苦笑)

こちらこそ読んでくださり有難うございました!
2014.12.15 23:24 | URL | #m9hpFNiU [edit]

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